架空国家を作ろう　第1.1世界線

ペルシャ人は紀元前2000年に南ロシアのステップ地帯から南下し、ペルシャ高原に定住した。その過程でペルシャ高原西部のメディア人と東部のペルシャ人などに分化した。紀元前6世紀には、ペルシャ人国家のアケメネス朝ペルシャが西アジアを征服し、オリエント世界を統一した大帝国を作り上げた。アケメネス朝の王は自らを諸王の王、つまり世界の支配者と呼んだ。アケメネス朝は、さらに西方へ領土を拡大するためにギリシャに侵攻したが、ペルシャ戦争で敗れ、西方への拡大が阻まれ、紀元前300年頃にアレキサンドロス大王によって滅ぼされた。その後大王が死去して、後継者争いであるディアドコイ戦争となり、帝国は三分割されて、セレウコス一世のセレコウス朝の支配下に入った。その後も、セレウコス朝シリアの支配が続いたが、セレコウス朝はシリアやバビロニアが政治の中心で、ペルシャ方面には目が向けられていなかったため、紀元前3世紀にペルシャ高原北部の遊牧ペルシャ人のパルティアが自立した。パルティアはセレウコス朝を圧迫しながら西に勢力を拡大し、メソポタミアからインダス川までを支配する大国となった。ついに、ローマ帝国と国境を接するようになったパルティアは、アルメニアをめぐってローマと激しく対立するうちに次第に衰退した。紀元後200年には、農耕イラン人のササーン朝ペルシャがパルティアに替わって西アジア全域を抑え、かつてのアケメネス朝の帝国支配とイランの伝統文化を再興した。ササーン朝ペルシャもローマ帝国と西部国境で激しく争ったため、次第に国力が衰えた。このことが、アラビア半島で興ったイスラーム教の勢力が、西アジアに急速に広がる前提となった。

7世紀に東方に進出したイスラーム教は、642年にニハーヴァントの戦いでササーン朝ペルシア軍を破り、それによってササーン朝は急速に衰え、651年に滅亡、ペルシャ高原はイスラーム化することとなった。イランの中世は、このイスラームの征服に始まる幾多の重要な出来事により特色付けられる。ペルシャ人はイスラーム帝国のアラブ人の支配者を受けることとなったが、その伝統的文化はイスラーム帝国化でも尊重され、ペルシャ文化とイスラーム文化は融合しペルシャ=イスラーム文化が生み出された。その後もセルジューク朝トルコ、モンゴル帝国、ティムール朝といった多民族支配が続くが、それらのイスラーム教国でもペルシャ人は官僚などとして重用された。

スンナ派のティムール朝の衰退した後、アゼルバイジャンで興ったイスラーム神秘主義であるサファヴィー教団が、武装した信者たちによってペルシャを統一し、サファヴィー朝が開かれた。
それまでペルシャ人はイスラーム教のスンナ派が多数であったが、サファヴィー朝成立を機に、シーア派国家に転身した。また、当初の神秘主義教団としての性格は次第に薄れ、シーア派信仰による統治が強められていった。イマームに代わってイスラーム教徒を指導する存在としてアラブ人のシーア派イスラーム法学者であるウラマーが招かれ、シーア派の学校も多数作られるようになった。このようなサファヴィー朝のシーア派による国づくりは、スンナ派を有力とする隣国のオスマン帝国やシャバイニ朝に対抗する意味もあった。
サファヴィー朝は、16世紀末から17世紀初頭にかけてアッバース1世のもと、最盛期を迎え、新都イスファハーンは「世界の半分」と言われるほどの繁栄を誇った。しかし、このころからポルトガルなどヨーロッパ人の勢力が西アジアに及び始めた。

1629年にアッバース1世が亡くなると、サファヴィー朝は次第に衰退し、国内は分裂状態になった。オスマン帝国にイラクを奪われ、ロシアの南下政策による侵略が始まった。18世紀に入ると衰退は決定的となり、アフガニスタンのカンダハールにホタキ朝が独立した。そして1719年にはペルシャ本土への進軍を開始、イスファハーンを落としサファヴィー朝は滅亡した。
しかし、ホタキ朝も不安定で、地方勢力のナーディル・シャーによって滅ぼされた。一時的にサファヴィー朝が復活したが、すぐにナーディルが権力を奪いアフシャール朝を開いた。ナーディルはシリアなどオスマン帝国に奪われた領土を奪還し、ムガル帝国軍を破ってデリーを占領するなどペルシャの国力は増大した。しかし、アフシャール朝では国教をスンナ派に転換させ、シーア派ウラマーを追放した。彼の治世は戦乱が続いて国土が荒廃し、農民にも重税が課せられたので反発を受け、1747年にナーディルも殺害された。ペルシャのスンナ派化も失敗し、民衆のシーア派信仰はそのまま続いた。その結果、アフガニスタンにはアフガン人がドゥッラーニー朝を自立させ、ペルシャにはザンド朝が成立する。ペルシャのザンド朝は一時、安定した支配を行うが、まもなくトルコ系のカージャール朝に滅ぼされる。
1796年、カスピ海沿岸で力をつけたアーカー・ムハンマド・ハーンがサファヴィー朝滅亡後のペルシャを統一し、ガージャール朝を興した。首都はテヘランに遷った。
弱体化したペルシャにロシアが侵攻し、グルジアやアゼルバイジャン、アルメニアなど南コーカサスを奪った。また、オスマン帝国とのあいだにも戦端が開かれ、ペルシャはギリシャ独立戦争を抱えるオスマン帝国を圧倒し一時はバグダードを落とす勢いだった。この戦争はイギリスの仲介によって和睦し、両国の国境線が確定した。1839年と41年にはイギリスが南方から侵略し、イギリスによるペルシャの半植民地化(グレートゲーム)が始まった。1901年にペルシャで石油が発見されると、ペルシャ経済はますますイギリスに従属していった。1907年にはイギリスとロシアの間で英露協商が締結され、ペルシャ北部をロシアが、ペルシャ南部とアフガニスタンをイギリスが支配することが決められた。
ガージャール朝の衰退とともにテヘランでは抗議運動が始まり、やがて全国へ波及するペルシャ立憲革命が起こった。しかしイギリスとロシアの介入によって革命は鎮圧された。しかし、革命の流れは止めれず、1921年にはレザー・シャーがテヘランでクーデターを起こしパフラヴィー朝が始まった。

パフラヴィー朝成立後、1927年よりレザー・パフラヴィーは不平等条約破棄、軍備増強、民法、刑法、商法の西欧化、財政再建、近代的教育制度の導入、鉄道敷設、公衆衛生の拡充などの事業を進めた。1931年には社会・共産主義者を弾圧する「反共立法」を議会に通した後、1932年を境に独裁化を強め、また、反イスラーム的な統治を行い、ペルシャ民族主義を重視した。パフラヴィー朝は、1935年には正式な国号をイランとした。これはゾロアスター教の聖典アヴェスターからとったことばであった。しかし、長年欧州諸国が「ペルシャ」と呼称し続けていたため混乱が生じ、結果的に、国内では「イラン」、国外では「ペルシャ」として決定された。
第二次世界大戦では、中立を維持しようとしたが、1941年8月25日にソ連軍とイギリス軍がそれぞれ国境を超えてペルシャに侵攻、ペルシャ軍は敗北しイギリスとソ連に南北で分割され、占領下でレザー・パフラヴィーが息子のモハンマド・レザー・パフラヴィーに帝位を譲位した他、親ソ派共産党のトゥーデ党が結成された。
1943年には、連合国の首脳がテヘランで、テヘラン会議が開催され、イランの独立と領土の保障に関する宣言書に署名が行われた。また、北部のソ連占領地では自治運動が高揚し、1945年にアゼルバイジャン人が、1946年にはクルド人がそれぞれ共和国が樹立されたが、1946年中に再統合された。モサッデク氏が首相になると、1950年初頭には、海外メジャーに独占された石油の国際化を図ったが、石油国有化に反対する英米及び、両国と結託した皇帝レザー・パフラヴィーによって失脚した。
この追放事件によって皇帝の権力は集中し、1957年に国家情報治安機構 (SAVAK) を創設し、SAVAKを用いて政敵や一般市民の市民的自由を抑圧したシャーは白色革命の名の下、米英の強い支持を受けてイラン産業の近代化を推進し、大地主の勢力を削ぐために1962年に農地改革令を発した。特に1970年代後期に、シャーの支配は独裁の色合いを強めた。

1978年に入るとテヘランで1万人規模の反政府デモが発生するようになり、民衆は、立憲君主制や言論の自由などを求めた。しかし、皇帝は軍隊による、無警告、無差別の発泡により犠牲者が出たため、さらにデモが活発化し、シーア派の指導者ホメイニー氏のもと、第二次ペルシャ立憲革命がおき、ペルシャの絶対的君主制は崩壊し、皇帝の権力は縮小され、立憲君主国になった。クルド人は第二次ペルシャ革命を支持し、自治権の獲得を目指していたが、革命成立後の政府は受け入れず、1979年8月にクルド人はイラン西部のケルマーンシャー州や西アゼルバイジャン州の都市を占拠するなど大規模な反乱を起こしたが、翌月までに大半が鎮圧された。
1985年代になると、革命の混乱は落ち着き、サウジアラビアに次ぐ世界2位の石油などを活かして、急激に経済成長が始まった。しかし、英米はペルシャでの石油利権を失ったことなどにより、経済制裁を実施した。これに対しペルシャは、原油輸出を停止し、オスマン帝国も同調して増産に慎重な姿勢を取ったため、世界的な原油不足となり石油危機が起こった。

2002年にはアメリカのブッシュ大統領はペルシャが核開発をしたとして「悪の枢軸」の一つと名指して非難した。そのためペルシャとアメリカとの関係は極端に悪化した。2005年の大統領選挙では対米強硬論者、反西洋文明を訴えたアフマディネジャドが、穏健派ラフサンジャニを破って当選、新大統領はアメリカに対する警戒を強め、核開発をアメリカに対する平等な権利であると主張して推進しようとしている。しかし、核拡散防止条約(NPT)に留まって国際原子力機関(IAEA)の査察を受けいれることも表明し、ペルシャ核開発問題は解決に向かう機運をみせた。
その背景には2006年に始まったアメリカが主導する国連安保理決議にもとづく経済封鎖がペルシャ経済に打撃をあたえ、国民の中に対米強硬路線の転換、統制の緩和を支持する声が強まり、2013年に穏健派の新大統領ロウハニ師(聖職者)が当選した。ロウハニ政権は積極的に対米関係の改善交渉を行った。
2015年には核保有国とペルシャ王国との間で、ペルシャの核開発を制限することと見返りとしての経済制裁を解除する「包括的共同行動計画」を策定することで合意が成立した。
核合意に基づいてペルシャは核兵器に利用される高濃縮ウラン貯蔵量を10万トンから300キロに削減すること、高濃度ウランとプルトニウムの生産は15年間は行わないことなどの核能力削減の実施を約束、2016年1月にIAEA(国際原子力機関)がペルシャの核施設削減を確認したことを受け、アメリカやEUは金融制裁、ペルシャ原油取引制限などの経済制裁を解除した。