架空国家を作ろう　第1.1世界線

ガルマニア大陸帝国において、農作物の栽培に関する研究開発は農事技術局の管轄下で行われている。ガルマニア農業試験場はそんな研究施設の一つ。ここでは主に作物の改良に関する試験が行われている。また、品種改良や土壌改良の研究だけでなく、新しい品種の開発も行われている。ガルマニアでは古くから、小麦や大麦などの穀物類が主食とされてきた。しかし近年では、家畜の飼料としても利用可能な大豆やトウモロコシなどの豆類の人気が高まってきている。そうした状況を受けて、帝国農業試験場はこれらの作物について、より効率の良い栽培方法の確立を目指して研究開発を行っている。面積はおよそ30万平方メートル。ガルマニア大陸帝国全土から選抜されてきた研究者たちによって日々、研究が進められている。この試験農場のおかげで、帝国では質の高い農産物が生産されているのだ。また、帝国農業試験場の敷地内にある研究所には広大な温室が設けられており、そこでは熱帯や亜熱帯地方でしか育たない貴重な植物が栽培されている。例えば、バナナやマンゴーなどである。そのほか、ジャガイモの原種もここで育成されている。こうした新種の野菜類は、将来的には帝国内の農村地域で栽培される予定だという。

帝国農業試験場の起源は16世紀にさかのぼる。当時、ガルマニア大陸帝国における食料の生産状況は安定せず、飢饉が頻繁に発生するような状況であった。このため、当時の皇帝ウルリッヒ5世は国内の食糧事情を改善するため、いくつかの政策を実施した。そのうちの一つとして、1713年に国内各地で行われていた食用可能な野生の果実や草花の野生種の無断採集を禁止したことがある。しかしこれによって、農村部の狩猟採集民たちは収入源を失ってしまった。そのため、彼らは生活のために、国内で育てられていた種子植物の収穫量を増やそうと努力した。その結果、多くの種が交雑し、やがて、数種類の亜種が生まれた。これが現在の果樹や野菜の原型であるとされている。しかし、これらはまだ未成熟な状態で、食べられるものではなかった。そこで、当時の人々の多くはこれらを"雑草"として無視していた。しかし、一部の熱心な愛好家たちの間では、これらの未熟果が密かに採取され売買されるようになっていた。そして20世紀に入ると、これらの果物や野菜は観賞用に改良されたり、家畜の餌として利用されるようになっていった。こうして、これらの果物や野菜は貴族たちの間で珍重されるようになったのだが、一方で庶民の間からはますます敬遠されるようになり、市場に出回ることはほとんどなくなってしまった。こうした貴重な作物種を繁殖させるため、政府は帝国農業試験場を1975年に開設した。当初は、貴族階級の人々を対象とした研究機関であったが、1990年代以降になると一般の人々にも広く開放されるようになったのである。

帝国農業試験場のトップを務める人物の名前は、イサーク・ローゼンバルク。年齢は40代半ばほどに見える。彼は元々は科学者であり、専門は植物学だったようだ。しかし、ある時を境に彼は政治家に転身すると、それまでとはまるで異なる政治思想を持つようになったという。それこそが、現在の帝国農業試験場の理念となったものだ。彼はガルマニア大陸帝国に、自由な競争原理を導入することを目標としている。そのため、彼の下で働く人々は皆、自らの研究成果を発表する場を与えられている。また、その成果によって高い地位を得ることもあれば、逆に低い地位に落ちることもある。もちろん、昇進するためには相応の業績を上げなければならないが。副農場長は、アダルベルト・レーマー博士が務めている。彼ももともと植物学者であり、帝国農業試験場の開設とともに主任に抜擢されたという経歴の人物だ。ちなみに、彼は無類のコーヒー好きとして知られている。そのため、自分の農園で栽培されたコーヒー豆の味には絶大な自信を持っているそうだ。他に主要な職員には、ドイツ人のマルキオ導師がいる。彼はもともと在野の研究者だったが、帝国農業試験場の職員募集に応じて採用された人物である。なお、帝国農業試験場にはこのほかにも、数多くの研究員たちが所属している。その中には、かつて民主主義運動に参加していた活動家たちも数多く含まれている。また、この部署には帝国全土から集められた農作物のサンプルが数多く保管されており、それらを観察するための設備も整っている。